遅漏の原因は一つだけじゃない? 遅漏の原因と対策法を医師が解説

遅漏の定義とは?

遅漏とは、性行為中に射精のタイミングが本人の意志に反して遅れる、または射精自体が困難な状態を指す性機能障害の一種です。

特徴的なのは、多くの場合自慰行為では問題なく射精できるという点です。
性行為でのみ射精が困難になり、この症状が重度化してしまうと腟内射精障害と呼ばれ、男性不妊の原因の7.4%を占める重要な問題となっています。

射精が遅いとどんなデメリットがあるの?

射精の遅さによっては、男性側はパートナーに対して申し訳なく感じてしまう一方で、女性側も性交痛や疲労を感じてしまうなど、精神的にも身体的にも負担を感じてしまい、カップル感の関係性にヒビが生じてしまう可能性があります。

射精の遅さに明確な基準はなく、本人やパートナーが射精の遅さにストレスを感じていたり負担に思っているかがポイントになります。

射精の遅さに不安があるからといって諦めてはいけません。
適切な対策を行えば徐々に改善されていく症状でもあります。


遅漏は主に大きく3つのタイプに分類され、自分がどのタイプなのかしっかり見極めることで自分に合った対策を講じることができますので、まずはタイプを確認してみましょう。

遅漏の種類と特徴

主な遅漏のタイプ

  • 鈍麻性遅漏:不適切なマスターベーションが原因
    床オナや強いグリップでの自慰、電動マッサージ機による刺激など、通常の性行為とはかけ離れた強い刺激を継続的に与えることで発症します。
    これらの不適切な習慣により、ペニスの感覚が鈍化し、通常の性行為での自然な刺激では十分な快感を得られなくなってしまっている状態です。
  • 老衰性遅漏:加齢による身体機能の低下が原因
    加齢に伴う自然な身体機能の低下によって引き起こされる遅漏です。
    男性ホルモン(テストステロン)の減少、全身の血行不良、射精と勃起に関わる筋肉量の低下、そして陰茎に発現している神経数の減少など、複数の要因が重なって発症します。
  • 心因性遅漏:精神的負担やストレスが原因
    身体的な問題ではなく、心理的な要因によって引き起こされる遅漏です。
    心因性遅漏の特徴として、特定のパートナーや状況でのみ発症することが多く、マスターベーション時には正常に射精できるという点にあります。

 

主な原因としては、過度のストレスや不安、パートナーとの関係性の問題、性に対するトラウマ的な経験、完璧主義的な性格などが挙げられます。
特に、性行為に対する過度なプレッシャーや失敗への不安が強い場合、それが心理的なブロックとなって症状を引き起こすことがあります。

まずはご自身のタイプを見極め、習慣や癖を見直して、症状が悪化するようなことをしていないか確認しましょう。
必要に応じて、心理カウンセラーや性機能専門医への相談を検討することも推奨されます。

 

遅漏の原因となる行為とは

ここからは、遅漏の主な原因となる行為を解説していきます。

1.不適切なマスターベーション

遅漏の主要な原因として、不適切なマスターベーション習慣が全体の約7割を占めているとされており、深刻な問題として注目を集めています。

以下が主に不適切とされているマスターベーションです。

  • 強グリップ
    性行為の際の自然な圧力ではなく、ペニスを力強く握り過剰な力で刺激を与えてしまうことを指す。
    腟内では得られない強さであり、結果として通常の性交での射精を困難にする可能性が高くなります。
  • 年齢を問わず多いとされている「脚ピン」
    脚を真っ直ぐに伸ばした状態での自慰行為。
    太もも、臀部、腹部、骨盤底筋群に過度な力が入り、前立腺への異常な刺激をもたらす。
    この体勢での射精習慣は、通常の性交体位での快感を得にくくし、結果として射精障害を引き起こす可能性があります。
  • 若年層に最も多い習慣である「床オナ」
    床や布団などにペニスを押し付けて自慰行為を行う手法
    体重による異常な圧力が通常の性交では決して得られない強い刺激を生み出すことにある。

 

これらの不適切な習慣の特徴としては、高い依存性と無意識下で行っているという点にあります。
そのため、改善には通常数ヶ月の時間を要することになります。

遅漏の原因は慢性的な行動で引き起こされるものだけではない

遅漏は不適切なマスターベーションが原因で発症する症状でもありますが、身体的・精神的な負担が射精の遅さにつながるケースも少なくありません。

 

2.身体的要因に伴う遅さ

40代以降の男性に多く見られるのは加齢に伴う遅漏です。

これは単なる体力の低下のみでなく、複数の要因が絡み合い発症する症状です。
原因となる身体の変化を一つづつ紐解いていきましょう。

  • 「男性ホルモン(テストステロン)」の低下
    テストステロンはいわゆる、性欲や性衝動に働きかけるホルモンでもあります。
    20歳を境に徐々に低下していくこのホルモンは、性欲の減少や筋肉量の低下だけでなく、性行為を行う際に必要な「興奮」「勃起」などのスイッチの役割を果たすため、性機能にも影響を及ぼします。
    そのため、性的刺激に対する反応が鈍くなり、射精までにより多くの時間を要するようになるということです。
  • 加齢に伴う「血行不良」も要因の一つ
    陰茎動脈の血管は直径わずか1mmという繊細さで、動脈硬化の影響を受けやすく、年齢とともに血液供給能力が低下していきます。
    この血流の減少は勃起力の低下を引き起こし、結果として腟内からの刺激が十分に伝わりにくくなり、射精までの時間が伸びてしまいます。
  • 射精と勃起に関与する筋肉群の衰え
    特に骨盤底筋群と会陰部の筋肉は射精機能において重要な役割を果たしており、これらの筋肉の衰えは射精時の収縮運動に影響を与え、射精のコントロールを難しくしています。

 

この問題に対しては、早期からの予防的なアプローチや適切なクリニックでの診療が求められる一方で、定期的な運動や適切な食事管理、必要に応じた医療相談など、総合的な健康管理も欠かせません。
加齢に伴う変化は自然な過程ではありますが、適切な対策を講じることで、その影響を最小限に抑えることが可能になるので、まずは身の回りの生活習慣を見直して見てください。

 

3.精神的要因に伴う遅さ

精神的なストレスやプレッシャーによって引き起こされる遅漏は「心因性遅漏」と呼ばれ、身体的な異常がないにもかかわらず、射精に時間がかかったり、射精できなかったりする状態です。

射精と勃起は自律神経系によってコントロールされており、精神的なストレスがそのバランスを崩すことで射精機能に影響を及ぼします。

■主な心理的要因

  • 射精へのプレッシャー
    性行為中に「射精しなければならない」という強いプレッシャーを感じることで、かえって射精が困難になっている状態です。
    特に妊活中のカップルでは、「早く結果を出さなければ」という焦りから遅漏が引き起こされることが多くなっています。
  • 性的なトラウマ
    過去の性体験に関連するトラウマは、遅漏の深刻な原因になります。
    トラウマ体験により、性行為自体に不安や恐怖を感じ、リラックスした状態で射精することが難しくなります。
  • 性行為への不安や緊張
    パートナーとの関係や、性行為に対する過度な不安は射精機能に大きな影響を与えます。
    「良いセックスができているか」という不安が自分を追い込み、結果として射精が遅くなったり、できなくなったりします。

 

これらの心理的要因による遅漏は、適切なカウンセリングや専門家による治療で改善できるケースがあります。
パートナーとの良好なコミュニケーションを図り、お互いの理解を深めることも、心因性遅漏の改善に重要な役割を果たします。
一人で抱え込まずにパートナーや専門医に相談してみましょう。

 

遅漏の対策

遅漏の原因を把握し、適切な改善策と予防を行うことで症状を緩和していくことができます。
日々の生活や無意識下の癖を見直すことで、改善できたケースも少なくないので、遅さに不安を抱えている方は是非下記の内容を参考に実践してみてください。

適切なマスターベーション習慣の維持

遅漏を予防するためには、若い時から適切なマスターベーションの方法を身に着けておく必要があります。
すでに不適切な習慣が癖づいてしまっている場合でも、継続すれば必ず症状は収まってくるので、根気よく続けてみましょう。

▼適切なマスターベーションへの改善手順

  • Step 1: 刺激の強さを調整する
    現在行っている刺激を徐々に弱めていき、目安として卵を潰さない程度(4~5kg)の握力に調整します。
    激しい摩擦は避け、優しいストロークを意識することで、実際の性交時に近い刺激に慣れていきます。
  • Step 2: 潤滑の改善
    乾燥している状態では、実際の性行為と異なり摩擦が強くなってしまいます。
    その為、ローションを使用して適度な潤滑を確保しましょう。

    特に水性のローションを選択することで、実際の性交時の感覚により近づけることができます。
  • Step 3: 姿勢の改善
    現在習慣となっている姿勢から、少しずつ変化をつけていきます。
    仰向け、横向き、座位など、様々な体勢でのマスターベーションを試みることで、特定の姿勢への依存を減らしていきます。
    特に脚を伸ばしたままの体勢は避け、より自然な姿勢での射精を目指します。
  • Step 4: 刺激方法の見直し
    手のひら全体を使った包み込むような刺激を意識し、部分的な強い刺激は避けます。
    一定のリズムを保ちながら、適度な緩急をつけることで、より自然な射精を育てていきます。

 

これらのステップを通じて、最終的には実際の性交時に近い刺激での射精が可能になり、特定の体勢や方法に依存しない柔軟な射精を獲得することを目指します。

 

生活習慣の改善やコミュニケーションも大事

生活習慣は自律神経やホルモンバランスに大きく影響してきます。直接的な改善策では無いため、軽視されやすい項目ではありますが、遅漏の原因に大きく関係してくるため、しっかり日々の習慣を見直してみましょう。

 

また、遅漏の改善において、パートナーとの適切なコミュニケーションは切り離せない要素です。特に心理的な要因による遅漏の場合、お互いの理解と協力が症状の改善に大きく影響します。恥ずかしがらずに、性に関する不安や悩みを率直に共有することが大切です。

 

健全な射精機能の維持が最終的な目標となりますが、改善には時間がかかるため、焦らず段階的に進めましょう
一度に大きな変更を加えると、かえってストレスになる可能性があるため、ゆっくりと着実に改善を進めていくことをおすすめします。

まとめ

遅漏は適切な対策と予防により、多くの場合で改善が期待できる症状です。
予防の基本となるのは、日常的な生活習慣の改善と適切なマスターベーション方法の実践です。
特に、過度な刺激を避け、実際の性交に近い方法を心がける事から始めましょう。

また、遅漏の原因は刺激に対するものだけではありません。
適度な運動による血行促進、節度ある飲酒、十分な睡眠の確保など、健康的な生活習慣を維持することや、パートナーとの良好なコミュニケーションを保ち、お互いの理解を深めることで、心理的な要因による遅漏の予防にもつながります。

ただし、自己判断での改善が難しい場合や症状が長期化している場合は、早めに専門医への相談をおすすめします。
泌尿器科や性機能専門外来では、個々の状況に応じた適切な治療法を提案してもらえます。遅漏は決して改善できない症状ではなく、適切な治療により改善が可能な問題です。

まず自分が「遅漏」だと認識すること、そして早めに改善へ取り組むことが、より良い性生活を取り戻すための近道となります。

 

おすすめの改善策は、TENGAヘルスケアの『メンズトレーニングカップ フィニッシュトレーニング』を使ったトレーニング方法です。
最も刺激の強いレベル1のカップからスタートし、徐々に刺激の弱いカップ(レベル1→レベル2→レベル3→レベル4→レベル5)でも射精できるようにトレーニングを行えます。

遅漏の多くの原因は不適切なマスターベーション(オナニー)であり、症状が当てはまる方は『メンズトレーニングカップ』を試してみてください。

 

福元 和彦(医師)

<この記事の著者>
福元メンズヘルスクリニック 院長
福元 和彦(医師)
■泌尿器科医 ■性機能学会専門医 ■抗加齢医学会専門医 ■排尿機能学会認定医
福元メンズヘルスクリニック

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