射精率93.3% 遅漏・膣内射精障害トレーニング臨床試験の紹介
射精率93.3% 遅漏・膣内射精障害トレーニング臨床試験の紹介
私のクリニックで、遅漏・膣内射精障害に対する、段階的なトレーニングの臨床試験を実施しました。
この研究は2022年に私自身が発表したもので、遅漏・膣内射精障害の治療を考えるうえで有益な結果だったと考えているので、ご紹介します。
試験の対象者
臨床試験の被験者は、以下の2点を満たすことを条件としました。
この条件で20名の被験者が試験に参加しました。
試験(トレーニング)方法
トレーニングでは、5段階の刺激レベルを持つ専用デバイス『MEN’S TRAINING CUP -FINISH-』(以下MTC)を用いました。
MTCは、マスターベーション用アイテムの『TENGA』を、トレーニング専用にチューニングした商品で、外装があるおかげで握り込めない点が、遅漏改善のトレーニングに適しています。
トレーニングでは、MTCを使ってマスターベーションを行いますが、刺激が強くなりすぎないように、動かす速度は毎分60ストローク程度とするように指示されました。
個の動かし方で、各被験者は15分*以内で射精できたら次のレベルに進むという設定で、週1-2回のペースでトレーニングを実施しました。
*15分というのは、実際の性行為でも目標となる射精時間だと考えています。
レベル5で15分以内に射精できるようになったら、トレーニングは完了です。
また、トレーニングの開始レベルは、各被験者の重症度に応じて差を付けました。
20名の被験者のうち、最も強い刺激であるレベル1から開始したのは5名でした。
興味深いことに、この5名全員が床オナ実施者であり、これは不適切なマスターベーションの習慣と重症度との関連性を示唆しています。
※この研究実施時と現在で、MTCの刺激レベルは調整されているので、これからトレーニングする方は、全員レベル1から開始で問題ありません。
トレーニングプログラムの特徴
- 実施期間を固定せず、個々の進捗状況や症状の変化に応じて柔軟に調整
重症度や改善速度には個人差があるため、各被験者のペースに合わせて実施されました。 - トレーニング時だけでなく、日常的なマスターベーションの習慣改善も重視
不適切なマスターベーションをしていると、再発の可能性もあるため、適切な方法を習慣化してもらうことも重視しました。
試験結果(改善率)
20名の内、試験後にパートナーと性交渉ができた被験者15名中14名(93.3%)が性交渉での膣内射精を達成しました。
これは驚異的な改善率であり、このトレーニングの有効性を強く示唆しています。
ちなみに、パートナーが居なかった、もしくは妊娠中で性交渉での評価ができなかった5名も、全員レベル5での射精はできるようになり、実際の性交渉での膣内射精が期待できます。
試験結果(トレーニング期間)
トレーニング期間については、個人差がありました。
トレーニング完了(レベル5で射精)までの期間は、平均3.7ヶ月(1.0-8.0ヶ月)でした。
また、膣内射精が可能になるまでは、平均4.8ヶ月(2.0-10.0ヶ月)でした。
この結果は、遅漏・腟内射精障害と一口に言っても、症状や改善の経過には差があることを示しています。
1名だけ克服できなかった原因は?
この試験で、1名だけ改善できない人がいました。
この原因は、勃起障害(ED)と性嫌悪症の併発でした。
これは、性機能障害が単独で存在するのではなく、複数の要因が複雑に絡み合う事例と言えるでしょう。
改善までの期間には個人差があり、焦らず継続的に取り組むことの重要性も示唆されます。
また、複合的な症状を持つ患者に対しては、より包括的なアプローチが必要だと考えられます。
まとめ:適切なトレーニングで遅漏・膣内射精障害は改善できる
この臨床試験で、遅漏・膣内射精障害の治療において、段階的な刺激のトレーニングの有効性を示唆する結果が得られました。
93.3%という改善率は、確立された治療方法が存在しなかったこの分野に、有益なアプローチを提示していると考えています。
ただし、今回の臨床試験では、被験者に対し医師(私)の指導があり、それが改善率を高めた可能性は高いと考えています。
特に、不適切なマスターベーションにおいて、医師の指導は重要だったと考えています。
この研究結果を元に、現在TENGAヘルスケアからは腰振りのトレーニングや、改善効果を維持するトレーニングまで、総合的なトレーニングプログラムが展開されています(私が監修しています)。
遅漏・膣内射精障害にお悩みの方は、是非トレーニングの実施を検討してください。
【参考文献】
[1]福元和彦, オフィスウロロジーと性機能診療(腟内射精障害の治療経験), 西日泌尿. 84: 228-232, 2022
<この記事の著者>
福元メンズヘルスクリニック 院長
福元 和彦(医師)
■泌尿器科医 ■性機能学会専門医 ■抗加齢医学会専門医 ■排尿機能学会認定医
福元メンズヘルスクリニック
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